UHF帯RFIDの電波利用申請手続き
要約:UHF帯RFID機器を導入する際に必要となる電波利用申請手続きについて解説します。特定小電力と構内無線局(登録局・免許局)の違いや申請時の流れ、必要な費用、提出先などを整理しました。送信出力や利用チャネル、資格要件など、知っておくべきポイントをまとめています。
はじめに
UHF帯RFID機器を導入する際には、電波法に基づく申請が必要となる場合があります。本記事では、特定小電力や構内無線局(登録局・免許局)などの区分や申請手続きを中心に、手続きの流れ、提出先、費用などの基本知識を解説します。
電波申請とは
電波申請とは、無線設備を日本国内で使用する際に、総務省が定める電波法に基づき免許や登録などの許可を得る手続きのことを指します。UHF帯RFID機器は、送信出力や利用チャネルによって以下のように手続きの要否が変わります。
- 免許が必要なケース
- 登録が必要なケース
- 特に申請不要なケース
製品の仕様や使用する周波数帯に応じて、適切な区分を確認し、免許や登録が必要な場合は速やかに申請を行いましょう。
UHF帯RFIDの機器の種類
UHF帯(920MHz帯)で使用するRFID機器には、大きく分けて「特定小電力」「登録局」「免許局」の3種類が存在します。利用する周波数や送信出力によって必要となる手続きが異なるため、以下の表を参考にしてください。
特定小電力 | 登録局 (構内無線局/陸上移動局) |
免許局 (構内無線局/陸上移動局) |
|
---|---|---|---|
LBT | あり | あり | なし |
周波数 | 19チャンネル | 6チャンネル (916.8、918.0、919.2、920.4、920.6、920.8 MHz) |
4チャンネル (916.8、918.0、919.2、920.4 MHz) |
出力 | 250mW以下 | 1W以下 | |
等価等方輻射電力 (EIRP) |
500mW以下 (27 dBm以下) |
4W以下 (36 dBm以下) |
|
キャリアセンス帯域 | 200kHz × n | ||
機材の免許 | 技術基準適合証明(技適)または工事設計認証(型式)取得が必要 | ||
ユーザの申請 | 不要 | 登録が必要 | 免許が必要 |
メモ:
特定小電力はユーザーによる申請が不要ですが、製品自体の技術基準適合証明(技適)または工事設計認証(型式)取得は必須です。
免許局として陸上移動局を利用する場合は、第三級陸上特殊無線技士以上の資格を持つ人を主任無線従事者や無線従事者として選任する必要があります。
補足
LBT(Listen Before Talk)
Listen Before Talk(LBT)は、送信の前に周波数帯が他の通信で使用されていないかを確認し、混信や衝突を回避する技術です。他の送信が検知された場合は送信を行わず、周波数が空いている時のみ送信を開始します。
キャリアセンス
キャリアセンスは、通信機器がデータを送信する前に他の送信が行われていないかを検知する技術を指します。LBTはキャリアセンスを含む制御手段の総称と考えるとわかりやすいでしょう。
ミラーサブキャリア
ミラーサブキャリアとは、UHF帯RFIDのタグがリーダーからの電波を変調して返送する際に生成される周波数成分です。タグ内部のクロックをもとにサブキャリアを作り、搬送波周波数周辺に新たなピークを生じさせます。
ポイント
UHF帯RFID機器導入時に最初に確認すべきは、その機器が「特定小電力」か「構内無線局/陸上移動局」かという点です。特定小電力であれば申請は不要ですが、登録局や免許局に該当する場合は手続きが必要となります。また、LBT有無による使用可能チャネル数の違いにも注意してください。
- 技術基準適合証明(技適)または工事設計認証(型式)取得済みが前提
- 特定小電力の場合 → 基本的に申請不要
- 構内無線局および陸上移動局の場合 → 登録申請または免許申請が必要
- 構内無線局とは、工場や事業所などの構内(敷地内)で用いられる無線局
- 陸上移動局とは、陸上を特定しない地点で停止中または移動しながら使用される無線局
- LBTなしの4チャンネルの場合 → 免許局
- LBTありの6チャンネルの場合 → 登録局
- 陸上移動局の免許局の場合 → 第三級陸上特殊無線技士以上を有した人を主任無線従事者もしくは無線従事者として選任が必要
登録申請の手順
登録局としてUHF帯RFIDを使用する場合は、総務省への「登録申請」が必要です。以下は一般的な手続きの流れです。
登録申請フローチャート

ポイントと注意点
- 個別登録申請と包括登録申請がありますが、複数台を一度に登録できる包括登録が便利
- 機器の型番、使用周波数、出力を正確に記入
- アンテナ設置図や仕様書などの添付書類を漏れなく用意
- 登録完了後に電波利用料の支払いが必要
免許申請の手順
免許局として使用する場合は、総務省への「免許申請」が必要になります。以下は一般的な免許申請の流れです。
免許申請フローチャート

ポイントと注意点
- 出力や周波数帯によっては無線従事者資格が必要
- 審査に時間がかかることがあるため、余裕をもって申請
- 免許の有効期限に注意し、更新が必要な場合は早めに準備
申請書のダウンロード場所
必要な申請書類は、以下の総務省のサイトからダウンロードできます。常に最新の様式を使用し、記入漏れがないように注意しましょう。
総務省 電波利用ポータルサイト
総務省 電波利用電子申請サイト
- マイナポータル
- GビズID
- 電子証明書
提出先(各都道府県ごと)
書類の提出先は、総務省 各総合通信局です。所在地や機器設置場所によって管轄が異なるため、下記リストを参照してご自身の所在地または機器設置場所に合わせて選択してください。
- 北海道総合通信局(北海道)
- 東北総合通信局(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)
- 関東総合通信局(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨)
- 信越総合通信局(新潟・長野)
- 北陸総合通信局(富山・石川・福井)
- 東海総合通信局(岐阜・静岡・愛知・三重)
- 近畿総合通信局(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)
- 中国総合通信局(鳥取・島根・岡山・広島・山口)
- 四国総合通信局(徳島・香川・愛媛・高知)
- 九州総合通信局(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島)
- 沖縄総合通信事務所(沖縄)
料金
登録申請手数料
- 包括登録申請手数料:2,900円(変更の可能性あり)
正確な金額は変わる場合があるので、総合通信局のページや申請書類等で必ず最新情報を確認してください。
免許申請手数料
- 免許申請手数料:3,550円(変更の可能性あり)
正確な金額は変わる場合があるので、総合通信局のページや申請書類等で必ず最新情報を確認してください。
電波利用料
年間400円(変更の可能性あり)
提出方法
申請書類は下記の方法で提出できます。申請先や必要書類は必ず最新情報を確認してください。
- 郵送:書留など追跡可能な方法がおすすめ
- 窓口持参:不備があればその場で確認できる
- オンライン申請:インターネットを利用して手続き完結
登録申請、変更届、廃止届、再登録申請
- 登録申請:新規で無線局を開設する際に必要
- 変更届:設置場所や送信出力など登録内容が変わる場合に必要
- 廃止届:無線局を廃止する際に提出。届出を怠ると電波利用料が継続請求される可能性がある
- 再登録申請:登録期間満了後も継続利用する場合に必要。期限切れ前に手続きを行う
また、免許や登録などの申請手続きに関するお手伝いやサポートも承っております。