フラグとセッションとサーチモードについて
要約:RFIDリーダーで使用されるEPC GEN2規格のセッション設定やサーチモードの概要を解説します。インベントリフラグとパーシスタンスの働きを理解し、複数リーダー運用や高速読取に役立つ最適化のヒントを紹介します。

EPC GEN2規格における設定の重要性
RFIDリーダーにはさまざまな設定オプションがありますが、その中でもセッションとサーチモードはタグの応答タイミングや同時通信の制御に大きく関わる重要な要素です。これらを正しく理解し、最適な設定を選択することでRFIDシステムの性能を引き上げることができます。
EPC GEN2セッションとは?
最大4つのセッション(S0、S1、S2、S3)が定義されており、タグがリーダーからのクエリに応答する際の状態管理を行います。複数リーダーが同時に稼働する場合でも、各タグが独立した状態を維持できるようにするのがセッションの役割です。インベントリでのクエリ応答を管理する“枠”と考えると分かりやすいでしょう。
フラグとは?
タグはセッションごとにインベントリフラグ(Flag AとFlag B)を持ち、初期状態は常に「A」にセットされます。リーダーからのインベントリ後に「B」に変化し、その後「A」に戻るまでの時間をパーシスタンスと呼びます。このフラグ変化によって、タグが重複応答を防いだり、読取精度を調整したりします。
パーシスタンスとは?
タグが「A」から「B」に移行してからどの程度「B」を維持するかを示す指標がパーシスタンスです。ユーザーが直接設定するのではなく、セッションやサーチモードとの組み合わせから結果的に決定されます。
セッションの詳細
以下の表は、EPC GEN2規格に基づく4つのセッション(S0、S1、S2、S3)での主なパーシスタンス時間の目安です。
フラグ | 設定時間 | 必要なパーシスタンス |
---|---|---|
S0 インベントリフラグ | 初期値・最終値にかかわらず2ms以下 | タグが通電:無期限 タグが非通電:なし |
S1 インベントリフラグ | 初期値・最終値にかかわらず2ms以下 | タグが通電: 公称温度範囲:500ms < パーシスタンス < 5s 拡張温度範囲:指定なし タグが非通電: 公称温度範囲:500ms < パーシスタンス < 5s 拡張温度範囲:規定なし |
S2 インベントリフラグ | 初期値・最終値にかかわらず2ms以下 | タグが通電:不定 タグが非通電: 公称温度範囲:2s< パーシスタンス 拡張温度範囲:指定なし |
S3 インベントリフラグ | 初期値・最終値にかかわらず2ms以下 | タグが通電:不定 タグが非通電: 公称温度範囲:2s< パーシスタンス 拡張温度範囲:指定なし |
セッション0(S0)では、フラグAからBへ移行後、リーダーの電波を受けている間はBを維持し、電波が途切れるとAに戻ります。一方、セッション1(S1)ではBへ移行した後、通電状態かどうかにかかわらず、500ms~5sの範囲でAへ戻ります。セッション2(S2)および3(S3)は電波を受けている間はBを維持し、非通電状態で2秒以上経過した後にAへ戻る仕様となっています(上限は明示されていません)。
サーチモードとは?
サーチモードは、タグがフラグの状態をどのように認識し、応答するかを制御するモードです。継続的にタグを読み取る、複数のリーダーで同時に読み取る、大量タグの高速読取など、利用シーンに合わせてサーチモードを選択することで読取り性能が最適化されます。
最適な設定の組み合わせ
RFIDを活用する現場では、用途ごとにセッションとサーチモードの最適な組み合わせを選択することが重要です。たとえば、スマートシェルフのように継続的にタグを読み取る場合や、多数のリーダーを並行運用する場合、高速で大量のタグを読み取るケースなど、それぞれに合った組み合わせを選ぶことで読み取り効率を向上できます。
RFID活用のキーポイントは、セッションとサーチモードの正しい理解です。
- セッション設定の見直し
- フラグ維持時間(パーシスタンス)の理解
- サーチモードの最適化
- 適切なセッション選択
- 複数リーダー運用時の設定
- 大量タグ読取時の調整

関連リンク:リーダーモードの選び方と設定のコツ