RFIDリーダーの選び方ガイド
要約:RFIDリーダーの選び方ガイドでは、国内外の様々なメーカーから提供されるRFIDリーダーの特徴、種類、周波数帯、電波法に基づくカテゴリ、モバイルリーダーと固定型リーダーの違い、インターフェースオプション、アンテナポート、GPIO機能、耐環境性、価格とコスト効率、追加機能、オンボードコンピュータ、開発環境について解説します。
RFIDリーダー選びのエキスパートガイド
RFIDリーダー(ライター)とは
RFIDリーダーライターは、データの読み取り・書き込みを行うためのツールです。一般的に「RFIDリーダー」と呼ばれますが、多くのモデルは書き込み機能も備えています。国内・海外メーカーから多種多様な製品が存在し、外観やスペックが似ていても実際には異なる点が多いため、導入目的や使用環境に応じて最適なものを選択することが重要です。
RFIDリーダーの種類と周波数帯
主要国ごとの周波数帯
RFIDリーダーは、アンテナやタグと連携して各国の電波法に則った周波数帯で動作します。グローバル展開を検討する場合、各国規格への適合が重要です。
- 日本(TELEC):916.7~923.5MHz
- 北米(FCC):902~928MHz
- 欧州(ETSI):865.6~867.6MHz, 916.1~919.9MHz
国際的な展開を考える場合、周波数帯の違いを理解し、運用予定国の規制に合った製品を選択することが重要です。
モバイルRFIDリーダー
ハンディターミナル型
モバイルコンピュータとRFIDリーダーが一体となったデバイスで、高速な読み取り性能を備えています。現場での作業や持ち運びが多い場合に最適です。
セパレート型/ジャケット型
Bluetoothなどでスマートデバイスに接続し、カスタムアプリケーションを使って動作させるタイプです。既存のスマホやタブレットを活用する現場に適しています。
固定型RFIDリーダー
卓上型リーダー
小規模な作業スペース向けで、デスク上やカウンターでの読み取り・書き込みに向いています。
大型固定型リーダー
倉庫や物流現場など、大量のデータを高速で処理する必要がある現場で導入されることが多いタイプです。
日本の電波法に基づくRFIDリーダーのカテゴリ
国内で使用するRFIDリーダーは、「特定小電力タイプ」と「構内無線局/陸上移動局タイプ」に大きく分かれます。免許や登録の要否、EIRP(等価等方輻射電力)によって扱いが異なるため、運用環境に合わせて選定が必要です。
特定小電力タイプ
特定小電力タイプのRFIDリーダーは、EIRP(等価等方輻射電力)が500mW以下(27dBm以下)で、アンテナ利得が3dBi以下となっています。
また、等価等方輻射電力が絶対利得3dBi の送信空中線に250mW の空中線電力を加えたときの値以下となる場合は、その低下分を送信空中線の利得で補うことができます。
構内無線局/陸上移動局タイプ
構内無線局タイプ:免許局(LBTなし)、登録局(LBTあり)
陸上移動局タイプ:免許局(LBTなし)、登録局(LBTあり)
構内無線局/陸上移動局タイプのRFIDリーダーは、EIRPが4W以下(36dBm以下)で、アンテナ利得が6dBi以下です。
また、等価等方輻射電力が絶対利得6dBiの送信空中線に1Wの空中線電力を加えたときの値以下となる場合は、その低下分を送信空中線の利得で補うことができます。
電源方式による選び方
- ACアダプタ:固定型・卓上型リーダーで一般的な電源供給方法
- PoE(Power over Ethernet):LANケーブルから電力を供給でき、配線が簡単
- 車載電源:トラックやフォークリフトなど車両に設置し、広範囲の読取ニーズに対応
- バッテリ:コードレスかつ可搬性に優れ、場所を選ばず使用可能
インターフェースオプション
- WLAN:コードレスで柔軟に接続でき、アクセスポイント機能を持つモデルも存在
- Bluetooth:スマートフォンやタブレットとの接続に最適
- 有線LAN:安定性を求める現場に向く
- シリアル接続:シンプルかつ古くからの端末との互換性も高い
アンテナポートとGPIO(汎用入出力)
アンテナポート数
1ポート、2ポート、4ポート、8ポートなど、複数ポートを備えたリーダーも多く存在し、マルチプレクサで1024ポートまで拡張可能な製品もあります。現場の設置範囲や読み取り精度によって選択しましょう。
GPIO(汎用入出力)機能
外部デバイスとの連携や制御が必要な場合はGPIOが重要です。
- GPIOとは:RFIDリーダーのGPIO(General Purpose Input/Output)は、外部デバイスとのインタラクションを可能にします。これは、モーションセンサーやLEDライトなどの補助デバイスを制御するために使用されます。GPIOは、リーダーがタグを読み取ったときに特定のアクションをトリガーするのに役立ちます。
- 電圧の考慮:GPIOを使用する際には、補助デバイスの動作に必要な電圧を考慮する必要があります。リーダーが供給する電圧が不足する場合は、追加の電源を使用する必要があります。
- 入力:GPIOの入力機能は、外部デバイスからリーダーへの信号を受信します。これにより、RFIDリーダーは外部デバイスの状態に応じて(例:人感センサー)特定のアクションを実行することができます。
- 出力:GPIOの出力機能は、リーダーから外部デバイスへの信号を送信します。これは、RFIDリーダーがタグを読み取ったときに、外部デバイス(例:LEDライト)を制御するために使用されます。
屋内外での耐環境性:IP保護等級
IP保護等級とは:RFIDリーダーは、水やほこりから保護される必要があります。これは、IP(Ingress Protection)保護等級によって評価されます。IP保護等級は、IEC規格60529およびEN 60529に基づいて、機器が埃や水にどれだけ耐えられるかを示します。
IP保護等級の構成:IP保護等級は2つの数字で表されます。
例:IP○○。
第1の数字は固形物(例:ほこり)に対する保護を、第2の数字は水に対する保護を示します。
人体及び固形物に対する保護:
第一記号(人体・固形物) | 第二記号(水の侵入) | ||
---|---|---|---|
記号 | 保護内容 | 記号 | 保護内容 |
0 | 無保護 | 0 | 無保護 |
1 | 直径50mmより大きい固形物に対する保護 | 1 | 鉛直に滴下する水に対する保護 |
2 | 直径12mmより大きい固形物に対する保護 | 2 | 鉛直から15°以内から滴下する水に対する保護 |
3 | 直径2.5mmより大きい固形物に対する保護 | 3 | 鉛直から60°以内からの散水に対する保護 |
4 | 直径1.0mmより大きい固形物に対する保護 | 4 | 任意の方向からの散水に対する保護 |
5 |
塵挨の侵入の制限
(正常な動作や安全性を阻害するような粉塵の侵入に対する保護) |
5 | 任意の方向からの水の噴流に対する保護 |
6 |
防塵
(塵挨に対する完全な保護) |
6 | 任意の方向からの水の強い噴流に対する保護 |
- | - | 7 | 一時的な水没に対する保護 |
- | - | 8 | 加圧条件下での長時間の水没に対する保護 |
例えば:
IP54とは塵挨の侵入の制限と任意の方向からの散水に対する保護
IP65とは防塵 (塵挨に対する完全な保護)と任意の方向からの水の噴流に対する保護
になります。
屋外、屋内、および極端な温度状況のアプリケーションでは、高いIP保護等級および/または広い動作温度範囲を持つリーダーが必要になります。
価格帯とコスト効率
RFIDリーダーの価格は、タイプと機能によって異なります。一般的な価格帯は以下の通りです:
- モバイルタイプ:数万円から30万円程度。
- 卓上型や固定型:10万円から40万円程度。
- ビームアレイタイプ:20万円から50万円程度。
中小企業の場合、少額減価償却資産の取得価額に関する損金算入の特例なども検討対象になります。
追加機能とオプション
- バーコードリーダー:RFIDリーダーに1次元バーコードリーダーまたは2次元イメージャーを組み合わせることで、従来のバーコードを読み取ることができます。
- GPS機能:GPSを搭載したモバイルRFIDリーダーは、広範囲での展開に適しています。読み取ったタグにGPS座標を関連付けることで、アイテムの位置情報を追跡できます。
- カメラ:カメラ機能を持つRFIDリーダーは、タグの読み取りデータと写真を組み合わせて使用する場合に便利です。これは、検査記録などで使用されます。
- 電話機能:電話機能を備えたRFIDリーダーは、Wi-Fiやその他の接続手段が利用できないリモートエリアでの使用に適しています。
オンボードコンピュータと開発環境
スマートRFIDリーダー
スマートRFIDリーダーにはプロセッサが搭載されており、リーダー自体でアプリケーションを実行することができます。これはオンボードコンピュータとも呼ばれます。メモリ容量は、アプリケーション開発において重要な要素です。また、タグの読み取りデータを保存してバッファリングする機能は、ネットワーク接続が利用できない場合に特に有用です。データを保存しておくことで、後でネットワークやホストコンピュータにアップロードすることができます。
SDK(開発キット)とAPIの重要性
API(アプリケーションプログラムインターフェース)は、RFIDリーダーを購入する前に、特にソフトウェア開発の段階で考慮すべき重要な要素です。APIはハードウェアとソフトウェア間の通信をシームレスにし、効率的な開発をサポートします。各メーカーは独自のAPIを提供しているため、開発環境に適したAPIを選ぶことが重要です。多くのメーカーはAPIをウェブサイトで公開しており、事前にダウンロードして調査することができます。

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