RAIN RFIDとは?遠距離・複数タグの同時読取が可能な注目技術

2005/02/18
2025/02/20

要約:
RAIN RFIDはUHF帯を活用し、遠距離かつ複数のタグを同時に読み取ることができる先進的なRFID技術です。
物流・小売・医療・製造など、多彩な分野で在庫管理やトレーサビリティの向上、作業効率化に大きく貢献しています。
導入時には電波環境の調査や適切なタグ選定、セキュリティへの配慮が不可欠です。

RAIN RFIDイメージ

1. RAIN RFIDの概要

RAIN RFIDは、国際標準規格「EPC Gen2(ISO/IEC 18000-63)」に準拠したUHF(860MHz~960MHz)帯を利用するRFID技術です。 名称の由来は「RAdio frequency IdentificatioN」の頭文字と、取得データをクラウドで管理する仕組みを表す「RAIN(雨・クラウド)」のイメージからきています。 UHF帯を使うことで複数のベンダー製品でも相互運用が可能となり、導入や拡張が容易です。また、モノをインターネットにつなげることで、識別・位置特定・真正性の確認に加えて、双方向のやり取り(エンゲージメント)が可能になります。

1-1. 他のRFIDとの違い

一口にRFIDといっても、使用する周波数帯によって以下のように分類されます。

  • HF(13.56MHz帯):近距離での読み取りに最適
  • LF(125kHz/134kHz帯):動物管理など近接での利用が多い

これらと比較して、UHF帯を用いるRAIN RFIDは、遠距離かつ一括読み取りに強みを持ちます。バーコードのように1つずつ読み取る手間を省き、複数の商品やタグを同時にスキャンできる点が大きな特徴です。

2. RAIN RFIDの基本的な仕組み

RAIN RFIDシステムは、以下の要素によって構成されています。

2-1. リーダー/ライター

電波を使って複数のタグを同時に高速で読み取り、必要に応じてタグへ情報を書き込む装置。
読み取ったデータをクラウドやサーバに送信して管理・解析を行います。

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2-2. アンテナ

リーダーの電波を送受信し、タグとの通信を可能にします。
アンテナの形状や配置によって、読み取り範囲や効率が大きく影響を受けます。

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2-3. タグ(Tag)

ICチップとアンテナを備えたラベル状のデバイス。
多くはバッテリーレスでリーダーの電波を利用して動作するため、メンテナンスが容易でコストを抑えられます。
商品などに取り付けられ、一意のIDや必要なデータがISO規格やGS1 EPC TDSなどに従ってエンコードされます。

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2-4. ソフトウェア/クラウド

リーダーで収集したデータを一元管理・解析し、在庫管理や物流管理などのシステムと連携します。
クラウド上での管理により、どこからでもリアルタイムに状況を把握して意思決定や業務改善に活用できます。

3. RAIN RFIDのメリット

RAINテクノロジーはUHF RFIDの中でも急速に成長している分野で、すでに世界中で何千億個ものアイテムがRAINタグによって管理されています。ここでは主なメリットを紹介します。

3-1. 遠距離読み取り

HFやLFなどの近距離用途のRFIDやバーコードと比べ、1m以上(最大数m)の距離から一度に読み取れる利点があります。

3-2. 複数タグの同時読み取り

バーコードのように1つずつスキャンする必要がなく、一度に大量のタグを高速で読み取れるため、倉庫や工場などでの棚卸し作業が大幅に効率化します。

3-3. 低コスト化・省力化

タグ単価は年々下がり続けており、大量導入のハードルが低くなっています。また、バーコードに比べて作業者の手間が減るため、人件費の削減にもつながります。

3-4. 高度なトレーサビリティ

EPC(Electronic Product Code)などでアイテムごとに一意のIDを割り当てられるため、製品の流通経路や使用状況を正確に把握できます。偽造品対策やリコール時の迅速な対応にも有効です。

4. RAIN RFIDの主な用途

RAIN RFIDは、以下のような業界・分野で広く活用されています。

  • 小売・アパレル:棚卸しや在庫管理、店舗と倉庫のリアルタイムな在庫連携、防犯対策
  • 物流・倉庫管理:パレットやケース、個別商品のリアルタイム追跡、入出庫管理自動化
  • 医療・ヘルスケア:医療機器や薬剤の在庫管理、トレーサビリティ、患者ID管理
  • 製造業:部品の組立履歴や品質管理、出荷トラッキング、生産ラインの自動化
  • イベント・アクセス管理:チケットや入退室管理、偽造防止
RAIN RFIDは、「遠距離・複数タグ同時読み取り」や「クラウドとの連携が容易」といった特長から、さまざまな現場で導入が加速しています。

5. 導入時に気をつけたいポイント

5-1. システム要件の定義

必要な読み取り距離や同時読み取り数、データ活用方法などを事前に明確化しておくことで、最適な機器選定やシステム設計が可能となります。

5-2. 電波環境の調査

設置場所の壁や機械、金属棚など電波の反射・吸収要因を考慮し、アンテナ配置やリーダーの出力を調整することが重要です。

5-3. リーダー・タグの選定

利用環境やコストに合わせ、タグのサイズやメモリ容量、耐久性などを検討します。同メーカー製品や相互運用性が実証済みの製品を選ぶことで、予期せぬ不具合を減らせます。

5-4. プライバシー・セキュリティ

タグには個人情報を直接書き込まず、必要に応じて認証や暗号化が可能なGen2 v2/Gen2 v3のタグやリーダーを検討してください。

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5-5. 運用・メンテナンス

タグ貼り付け作業やソフトウェア更新など、定期的な管理が必要です。万が一の機器障害やソフトウェアトラブルに備えたバックアップ計画も重要となります。

これらのポイントを踏まえ、事前にシステム要件を固めておくことで、RAIN RFIDの導入効果を最大化することができます。
周波数帯 読み取り距離 主な用途例
LF帯(125kHz/134kHz) 数cm~十数cm ペットのマイクロチップ、近接管理
HF帯(13.56MHz) 数cm~1m程度 交通系ICカード、電子マネー
UHF帯(RAIN RFID) 1m~数m 物流、在庫管理、トレーサビリティ
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